紀州梅苑
梅との一年
梅畑に一歩入れば分かる。みなべの一年をまとめました。
梅づくりの先生が言っていました。
「その人の梅畑に一歩足を踏み入れたら、その梅を作っている人の性格と成、不成功が分かります」
紀州梅苑の農作業と梅干作りの1年間の作業を通じて、皆さまに私たちの製品作りの情熱と誠意を感じ取っていただければ幸いです。
店主、坂本利廣と梅との1年をご覧下さい。
10月October
草刈
梅の苗木植えの為の地(土)造り。夏の間に生えた夏草を刈って畑の手入れをします。
11月November
梅の木の剪定
来年に向けて不要な枝を切ります。不要な枝を切ることにより春にまた新しい枝が出てきます。
12月December
地造りした所に苗木を定植
梅の木の剪定
人間で言えば4~5歳ぐらいの苗木を植えます。11月に引き続いて剪定も行っています。
1月上旬January
まだまだ小さい蕾です
梅のつぼみはまだまだ小さいですが、少しずつ成長をはじめます。
畑に石灰をまきます
石灰をまくことにより、酸性の土壌をアルカリ性に変えていきます。
1月下旬January
畑に石灰をまきます
梅の花が咲き始めると受粉のためにミツバチの箱を畑に設置していきます。
南高梅は自家受粉できません。その為にちがう品種の梅(古城・小梅・雑種など)を間に植えて交配さすか、ミツバチを媒体として交配させます。
開花の時期がきたら蜂屋さんからミツバチの巣箱を借りてきて畑に置いて受粉させるんです。
■ミツバチの活動条件
気温: +12℃以上 出動時間
風速: 3m 以下 午前10:00ごろ
雨量: 0
帰宅時間: 午後3:00ごろ
開花時に低温になり、その後も天候不順の年は、ミツバチもあまり飛ばす、作柄は不作傾向になってしまいます。
2月February
梅の花が開花
気候にもよりますが、平均2月中旬に梅の花が満開になります。近隣にある南部梅林は観光客の皆さんで大いに賑わいます。
3月初旬March
防除開始
梅を害虫や病気から守り、品質のいい梅を作るために防除を施します。
3月中旬March
新芽が出始める
梅の新芽が出始めます。
3月下旬March
畑に施肥
作物に吸収される養分のうち、肥料として常に補給するチッソ、リン酸、カリを「3要素」といいます。 それ以外の作物の種類によって吸収量が著しく異なる養分を「特殊要素」と言います。この両者は吸収量が多く10アール当たりkg単位で吸収するので「多量要素」とも言われています。 10アール当たりの吸収量が少なくてg単位で吸収される養分を「微量要素」と言います。しかし、多量要素であるから大切、微量要素だからおろそかにしてよいというものでありません。 どの養分も必要量が満たされないと、作物の生育がわるく、全く含まれていないと作物は育たない場合があります。
梅が膨らみ始めます
施肥の効果が出始めます。
各養分の作物生育に対する役割
1.チッソ
タンパクや葉緑素の構成成分で、適正量存在する場合は葉色がよく、生育が旺盛です。
でも、過剰になると病原菌や害虫におかされやすくなり、足りなくなると生育が悪くなります適切な量とタイミングが大切な養分です。
2.リンサン
細胞核を構成するタンパクに多く含有される。果実の甘味を高め、根の発育を促進し、根菜類の根部の肥大をよくする。細胞組織を強くし、病害虫に対する抵抗性を憎す効果があります。
3.カリ
炭水化物やタンパクの合成をつかさどる。
体内での炭水化物の転流をよくし、バレイショなどのデンプンや砂糖の含量を高める。野菜には吸収量がもっとも多い養分であるし、不足すると品質がわるくなる。
しかし、過剰に吸収するとほかの養分の吸収が悪くなるのでさじ加減がポイントです。
4.カルシウム
作物体内でタンパクを合成するとき生成される酸を中和し、体内の各養分の移動を助けます。
5.マグネシウム
葉緑素の構成成分であり、リンサンの吸収を助け、植物の体内での養分移動を良好にします。
野菜なんかだとリンサンよりもたくさん吸収される養分です。
欠乏すると葉色がわるくなるし、生育がおとろえてきます。
6.マンガン
酸化酵素の作用を助ける。葉緑素の生成に必要である。アミノ酸生成の作用を助けます。
7.ホウソ
高等植物の通導組織に関係しているらしく、不足すると養分の移動が阻害されます。とくにカルシウムの体内の移動に関係が深いようです。
8.モリブデン
酸素を運ぶ役目をします。とくに硝酸が体内でアンモニアになるときにモリブデンが必要になり、モリブデンがないと植物は内に硝酸がたまり、枯死してしまいます。
4月上旬April
草刈
梅の枝も伸び葉も大きくなってきます。春草を刈って畑を手入れします。暖かくなるにつれてだんだん梅の実も大きくなってきます。
4月下旬April
芽カキ
梅の木の不要な新芽を切ります(芽カキをすると言います)。
5月上旬May
施肥
再び畑に施肥を施します。
5月中旬May
選果機セット、小梅の収穫
梅の実もかなり肥大します。選果機をセットし、小梅から収穫をはじめます。
5月下旬May
畑一面にネットを敷きます
南高梅の収穫の準備の為、畑一面にネットを敷きます(草スキーができますよ!)。
6月初旬June
梅酒・梅ジュース用南高青梅の収穫
いよいよ待望の6月です。6月に入ると、まず最初に梅酒や梅ジュース用の青梅を梅の木から直接、人の手でひとつひとつ収穫していきます(こちらではムシリといいます)。 1年間間見守ってきた梅が実る、待ちに待った月です。
6月中旬June
梅干用の完熟南高梅を収穫・塩漬け
やっと実も完熟し始めるので、梅干用の梅として使えます。 木から直接人の手で収穫したり、完熟して落下してしまった実を拾ったりするんです。 この時期が収穫の最盛期です。 この頃から同時進行で、選果機で各サイズ別に選別した青梅をタンクに入れて塩漬けを始めます(青梅1Kgに対して粗塩200g位入れる) 。 みるみる梅酢が上ってくるんですよ。
6月下旬June
ネットに落ちた梅を拾います
梅の実も完熟して落下する為毎日梅拾いをします(1粒1粒手で拾います) 。枝をかいくぐっての梅拾いは中腰になったり、四つんばいで拾ったりと、けっこう腰にきます。
6月末June
収穫期の終わり
梅の実もほとんど落ちて収穫も終わりに近づき、少し枝に残った梅は最後に竹の竿で枝をたたいて梅の実を落としてかたづけます。完熟梅の選別も徐々に落ち着いてきます。
7月初旬July
ネットの片付け
梅の収穫も終わり、畑に敷いたネットを片付けていきます。今年も梅の木さんおつかれさまでした。
7月中旬July
施肥、草刈
施肥(石灰を撒きます) をし、生え始めた夏草を刈ります。
7月下旬July
梅の天日干し
いよいよ梅雨もあけ、塩漬けした梅を三日三晩の天日干しです。 ビニールハウスいっぱいに黄色い梅が日光浴です。 まず大きな4Lサイズ、3Lサイズから干し始めます。 大きいサイズから始めるのは、大きいほうが干すのに時間が掛かるからです。 一枚一枚人の手で並べて干していきます。
梅を広げて2日目の夕方に梅の上下をひっくり返す作業をおこないます。 この作業はこのあたりの呼び方で「コロをする」というんです。昔は1粒1粒手の指でコロコロと裏表をひっくり返していたからなんですね。
コロをしたその夜に夜露がおりてきた頃ハナシ(くっついている梅を一粒一粒はなします)をします。約3日間干して梅を取り入れます。取り入れた梅はまだ温度が高いので、 冷えるのを待って10Kg樽に1粒1粒キズや果肉の状態別に人の目と手で分類してに樽に入れます。
8月August
梅干しの選別
梅のサイズは選果機で選果して漬けているのですが、梅の質は1粒1粒違うので7種類ほどに人の手で分類します。 手間と根気が非常にかかる仕事ですが、上質な梅干しが見つかると嬉しく、誇らしく思います(笑
天日干し最盛期
8月は梅の天日干し最盛期です。お盆はありません(笑 晴れた日は天日干し、雨の日は選果場で梅の選果と休み無し。 この時期は本当に目の回るような忙しさですが、時間との勝負なので休んでいられません。
9月September
天日干しと日照り対策
まだまだ梅の天日干しもしています。梅畑は日照り続きで雨が長く降らない日が続くと、たまにスプリンクーラーで散水します(めったにありません)。 元来梅は中国が発祥地です。やせた土地でも育ちます。ここ南部郷ではその昔、やせた土地に何か作物はできないかと考え、雑木林を鍬で開き梅の苗木を植えたのが始まりです。今日でこそ土壌管理が出来るようになりましたが梅の木は元来力強い果樹です。日照り続きでも人間の手で水を散水すれば“甘える”のです。甘えてしまっては木の根が張りません。がまんしてがまんして、何とか水分のある所まで自力で根を張るのです。 たくましいのです。 子育てと同じで、普段は厳しくして、時に応じて愛情をそそぐのです。梅の木は我が子と同じです。
10月中旬September
草刈と地造り
梅干し終了後、木のセイロやムシロ、ネットを洗ってビニールハウスで乾燥させて、やっと梅干の1年が終わりです。梅干作業がようやく終わり、畑に戻ってみると、畑は一面の夏草・・・。 またまた草刈と梅の苗木植えの為の地(土)造りが始まります。梅干作りはたいへんな重労働です。